シネ用のキノプティック・アポクロマート 100ミリ f2を、戦後間もない頃にライカ・スクリューマウントに改造したと思われる一本です。4群6枚構成のガウスタイプ。重量は970g。製造番号3xxx、1940年代の製造と思われます。
本品はごくソフトな初期のコーティングが一部のエレメントに施されていたようですが、クリーニングでも剥がれてしまう程度のソフトコートで、現在はコーティングはほぼ残っていません。
フランスへ買い付けに行くと、このタイプの往時のライカスクリュー改造レンズを稀に見掛けるのですが、距離計連動カムが付いているにもかかわらず、ほぼ100%距離計連動がダメダメです。これまでマトモに連動する個体は見たことがありません。
しかしながら、本品は修理業者さんの尽力により、近接1mから無限遠まで、通常の撮影で問題が無いレベルまでほぼほぼ距離計連動するよう調整して頂きました。
ライカ距離計連動で使える、夢のキノップ100mm。
全国100万人のキノプティークファン(笑)の方々、お待たせしました!
当店過去販売品です。お客様に大切に使われ、この度当店に出戻って来ました。お帰りなさい!
本レンズに用いられている鏡胴は、KinoptikやAstro-Berlin、SOM Berthiot等の中望遠レンズを、ライカ距離計連動に改造した個体に多く使われています。おそらく戦後間もない頃のフランス製の鏡胴で、通常はアルミ製なのですが、本品は重量感のある合金(素材不明)が使われており、その上にシルバーのペイントが施されています。
そのグレーペイントが経年によりひび割れが生じており、その様はまるで古陶磁に入る貫入のよう。初期アンジェニュー S1と同じような茶色に褪色したKinoptikのレンズヘッドと相まって、何とも侘びた佇まい。
2022年にフルオーバーホールと共に、上述の入念な距離計連動調整を行っています。ガラスは中玉のごく僅かなバルサムの劣化、ごく軽微な拭き傷が数本見られますが、これらは実写にはまず影響無いでしょう。
また、初期のキノプティック100mm f2は、内面反射に起因する画面中央部のフレアに悩まされる事が多いのですが、本品は徹底した内面反射対策を行って頂き、不要なフレアが出来る限り出ないように仕上げて頂きました。
前回販売時のものですが、作例を試写館にアップしました。不要なフレアは少なく、滑らかでしっとり穏やかな描写を楽しめました。試写館をご覧頂ければ幸いです。