戦前ライツの中望遠銘レンズ、ヘクトール 73mm f1.9。本品はブラックペイントとニッケルメッキ仕上げ。ライツの製品コードはHEKON。製造番号14万台。1931年に製造された、ヘクトール 73mm製造初年度のうちの1本。
距離表記はfeet。回転ヘリコイド式。本品は鏡胴下端にGermany刻印があり、輸出用だったと思われます。フィルターは本来かぶせ式ですが、39mmのねじこみフィルターも使えます。このレンズを所有すると、73mm専用の折りたたみファインダー、SAIOOが気になってきますが、これがまた見つかりません。
絞り開放付近ではフワリとした滲みを伴う写りで、実にオールドレンズらしい味わい。絞り込んでいくと解像が立ち上がり、被写体を引き立てる描写となります。絞り値3.2〜6.3が使い頃ですが、オールドレンズらしい描写が味わえる絞り開放〜2.2付近も積極的に使っていきたいですね。
ヘリコイドリングやカド部に軽微なペイント落ちこそ見られますが、全体的にかなり綺麗な外観です。専用フードやキャップも使用感少なく綺麗なもの。黒/ニッケルのヘクトール7.3cmとしては、上位コンディション。
2025年3月にフルOH済。絞りとヘリコイドの操作感は、見違えるような滑らかさです。最短側ドン突きから無限遠まで距離計連動バッチリ。指標上の最短撮影距離は1.5m(5feet)ですが、この個体は約1mまで連動するありがたい一本です。
レンズ前玉には軽微なヤケとごく浅い拭き傷が少々、中玉にはごく軽微ながら点状のバルサムの劣化が見られますが、撮影への影響はまずありません。他、ヘクトールにありがちなクモリなどは見られず、初期のヘクトール7.3cmとしては総じて綺麗なガラスです。
実写テスト結果も大変良好でした。
純正フードとフードキャップ、リヤキャップが付属します。