日本光学カメラ史の起点となる記念すべき一台、ニコン I型。ニコンS、ひいてはニコンFへと繋がるその始祖。
ニコン I型の生産台数は、テスト機を除いた完成品が700台少々、実際の販売台数は500台足らずと言われています(諸説あり)。
また、60922が第1号機、609759が最終機と言われており、1948年3月から1949年8月かけて製造されました。本品の製造番号は609549。
ニコンI型は戦後、日本光学から民需品として販売された初の量産カメラ。そして「ニコン」と名付けられた最初のカメラです。縦横比は24×32mmのニコン判という独自の規格を採用。このニコン判はラボからの要望で改める必要が生じ、ニコンM型とS型では24x34mm、S2型以降になってからはライカ判 24x36mmへと変遷していきます。
シャッターは布幕フォーカルプレーンシャッター、ファインダー倍率は0.6倍。距離表記はフィート。
本品は4本のフィルムガイドレール(初期は2本)、固定式スプール、接眼部の3重の飾り輪、シャッター機構を覆う底板など、ニコン I型中期〜後期の特徴を備えます。エプロン部の固定は6本のスクリュー。底蓋には小さく「MADE IN OCCUPIED JAPAN」の刻印。本体と背蓋のシリアル番号は一致しています。
レンズは初期のニッコール-H.C 5cm f2 沈胴式。製造番号は811257。上3桁の捨て番が811のシリーズで、絞り環の外周には4箇所のローレット。3群6枚。過去に当店で取り扱った、この時期のニコン I型と数々の特徴は一致、レンズのシリアル番号帯も合致しています。
フルオリジナルのレアな一台。珍品。
底蓋に2〜3本ほど薄い長めの傷、また薄い擦れが多少見られます。また、三脚ネジ部分が僅かに凹んでいます。エプロン部分にも多少の薄い擦れ傷がありますが、ニコン I型としてはかなり綺麗な部類でしょう。キレイ目な外観と相まって、ボディ内部の黒塗りもしっかり残っており良い状態です。
2024年にボディ、レンズ共にオーバーホールを行っています。各部の作動快調です。
惜しいことに、レンズ後玉側の真ん中に直径1cmほどの大きなバルサム切れが見られます。他薄い拭き傷が見られますが、カビ等はありません。
時代が少し下がりますが、純正の黒アルミキャップが付属します。