ズノー 50ミリ f1.1。初期型ピンポンズノー。帝国光学製。Teikoku Kogaku Japan銘。国産大口径レンズ開発競争の口火を切った記念碑的なレンズ。1953年発表、1954年発売。浜野道三郎氏の設計です。絞り羽根は8枚。ヘリコイドの距離表記はfeet。
本品はシリアル37xx番。後玉が大きく飛び出した、通称ピンポン玉。
独特の開放描写が強烈なクセ玉で、出っ張った後玉の取扱いには細心の注意が必要ですが、オーラさえ感じられる佇まいでレンズマニアには堪らない一本。
淡いブルー系のコーティングが美しい。絞り開放では目がくらむような白いベールのフレアが全面を覆いますが、中心部は繊細な結像を見せます。少し絞るとフレアは大分落ち着き、シャープで解像力の高い描写へと変化してゆきます。わずかに絞ったあたりが美味しいところでしょう。
珍品。
長年の使用や経年による擦れやメッキの劣化が鏡胴全体に見られ、ややくすんだ感じの外観です。また、マウント面にアタリが見られますが、今回の整備の際に丁寧に修正しており、ピントや距離計連動などの実用上の問題はありません。
2025年10月に大幅なピント修正を含めたフルOH済。当初、大幅な前ピンなど不具合が多い個体でしたが、時間とコストをしっかり掛け、入念に重整備を行って頂きました。毎度毎度、一筋縄ではいかないのがさすがのピンポンです(笑) ピント良好、距離計連動もバッチリに仕上がり、絞り、ヘリコイドの操作感も見違えるように改善しました。
前玉と後玉には拭きキズが少々、前玉の周辺部にカビ痕、中玉周辺部の端の方にバル切れ、後玉裏の周辺部にクモリが見られます。しかしながら、ピンポンは劣化している個体が多いだけに、まずまずのガラスコンディションでしょう。
実写テスト結果も良好でした。試写館に作例を掲載しました。開放付近は、初期のピンポンらしい収差のオンパレードを楽しめます。フィルムの時代では何が映るか予想できず、開発にはさぞや困難を極めたことでしょう。唯一無二の設計、デザイン、描写に心躍ります。デジタル時代に再び輝く暴れ銘玉。
レアな純正前後キャップと革ケースが付属します。