ライツのコード名はHEGRA。戦前ライツの中望遠銘レンズ、ヘクトール 73mm f1.9。ライカ最初の中望遠大口径レンズ。本品はブラックペイントとクロームメッキ仕上げ。直進ヘリコイドのタイプ。
本品の製造番号は14万台。ライツの製造番号表からは1932年製となりますが、同じ番号帯から混在する直進ヘリコイドのオールブラック鏡胴と同様に、1933/1934の製造とも思われます。feet表記。ノンコート。距離計連動。
ヘクトール73mmは、最初期は距離計非連動、次に回転ヘリコイドで距離計連動に、その後オールブラックとこの黒/クローム鏡胴モデルで、アグファカラー撮影アクセサリーに対応するために直進ヘリコイドとなり、後に再び回転ヘリコイドへと戻ります。大口径中望遠だけに、距離計連動精度の問題もあったのでしょう。
本品は距離計連動精度が素晴らしく、撮影していて気持ちの良い一本。
絞り開放付近ではフワリとした滲みを伴う写りで、実にオールドレンズらしい味わいが得られます。絞り込んでいくとググッと解像感が増し、被写体を引き立てる描写となります。使い頃はf3.2〜4.5付近ですが、連動の良さと相まって、オールドレンズらしい絞り開放付近の柔らかな描写も積極的にお楽しみ頂きたい一本です。
ヘリコイドのクロームメッキ部に小傷が見られます。また、鏡胴のブラックペイントのエッジ部分にペイント落ちが多少見られますが、製造からの90年近い歳月を考慮すれば、大切に使われて来たことが伺える外観です。
2025年7月にフルOH済。絞り、ヘリコイド共に大変良い操作感に仕上がっています。5feetの最短指標から無限遠まで、距離計連動良好です。
前玉に経年によるガラス焼け、中玉のフチに沿ってごくわずかなバルサム切れが見られますが、他に拭き傷やカビ等は見られず、ヘクトール 73mmとしてはかなり綺麗なガラスです。
試写結果、大変良好。試写館に作例をアップしました。ご覧頂ければ幸いです。
綺麗な純正フード&フードキャップ、リアキャップが付属します。