アルタ35。三鈴光学製。製造時期は1957年〜1958年頃。国産では最も遅い時期に登場したライカコピー機。アルタ35の製造台数はわずか500台程度と言われていますが、本品の製造番号はなんと700500のキリ番!これまでこれ以降のシリアル番号も見ていますが、ほぼほぼラストに近い番号を持つ一台です。
付属のレンズはアルタノン 50mm f2の後期型、黒鏡胴。ライカLマウント。3.5feet(約1m)まで距離計連動し、そこからは距離計非連動ながら1.5feet(約45cm)まで近接撮影が可能です。ニッコールレンズにも似た接写機能ですね。
センセーショナルな1954年のライカM3登場から、約3年が過ぎたタイミングで発売されたモデルですが、基本的な構造と機能はライカDIIIで、各部のサイズも一緒です。シャッターの最高速も1/500。
このアルタノンf2付きセットの価格は35,000円。同時期に新登場した、f1.4付きのニコンSPの98,000円と比べても、かなり廉価だったようです。
機能面ではライカ IIIaやIIIfにも及ばず、そして同年登場のIIIgには到底及ばないモデルを、新参者であった三鈴光学が発売という構図。諸兄も予想されるとおり残念ながらほとんど売れず、僅かな台数の生産に留まり、珍品ライカコピーの地位を盤石にしてしまいました...
一説によると、時代遅れのカメラがアルタという新ブランドで登場した背景には、1956年頃のチヨタックスの販売中止に伴い、製造を担当していたライゼ光学が販売窓口とブランド名を変えて、三鈴光学アルタ35として販売したとも言われています。加えて、アルタノン 5cm f2はタナー 5cm f2と外観、スペックにおいて酷似しており、田中光学によるOEMと言われる説にも合点が行きます。
混沌とした戦後の日本カメラ史を感じさせる1台です。珍品。
底蓋に軽微な擦れが少々見られる程度で、他は使用感少なく全体的に使用感少なく綺麗な状態です。
レンズ、ボディともにOH済。各部の動作正常。操作感スムーズに仕上がっています。ファインダーの見え味も良好です。
レンズの前玉と後玉には軽微な拭きキズ、各面にわずかなコーティングの傷みが見られますが、撮影への影響はまず感じられないレベルでしょう。
全体的にかなりコンディションの良い一台。コレクションにどうぞ。
参考:朝日ソノラマ社発行 カメラレビュー別冊・クラシックカメラ専科No.5「ライカ型カメラ」