フーゴ・メイヤーのPlasmat 90mm f1.5。ドイツBentzin社のRecord-Primar、IhageeのNachtreflexなどの中判カメラに装着されていたと思われます。距離表記はmeter、絞りはf1.5〜f8で国際絞り。1931年製造。製造番号は46xxxx。中判サイズをカバーします。
プラズマートは、AnastigmatやPlanar、Tessarなど数々の銘玉を発明した、ルドルフ博士の設計。本品はKino-Plasmatと同じレンズ構成です。
プラズマート 90mm f1.5は当店でもこれまで数本しか扱っていない、滅多に出て来ないレアレンズ。f1.5ではかなり柔らかな描写で、f4くらいまで絞ってもまだその傾向を感じます。f5.6まで絞ると、一気に像が立ち上がりかなりシャープな描写に。f8まで絞ると、やや像が崩れ始める印象を受けます。
なお、35mm判用のキノプラに見られるような、ぐるぐると巻くような収差はあまり感じられません。このレンズが中判用のためイメージサークルが大きく、35mm判では中央部分のみを使っているためだと思われます。中判カメラで使うと、また違う顔を見せてくれそうです。
アダプター込みの重量は1330gとかなりの重さで、撮影には気合いが必要です。重量のみならず非常にクセのある描写で、使いこなすにはかなりの慣れが必要かと思われますが、条件が合った時の描写は唯一無二でしょう。
手擦れにより真鍮地が多少見えていますが、アタリや凹み等は見られず、黒塗りとニッケルメッキの貫禄に溢れた美しい鏡胴です。丁寧な改造が行われたようで、改造部分も純正品の様な仕上がり。
レンズには経年によるわずかなガラスのヤケ、多少のチリの混入が見られますが、拭きキズ等は見られず、古の大口径レンズとしてはかなり状態の良いガラスです。絞りやヘリコイドの操作感も滑らかです。
ミラーレス機やライブビューでの撮影の際、ピーキングに頼り過ぎると、実像の解像力が一番高いポイントにピントが合わない場合があります。撮影の際にはピーキングを使わず、ライビュー画像を拡大しピント合わせを行うと良い結果が出るようです。
当店でも実際にテストを繰り返した結果、絞り開放付近ではコントラスト(色の濃淡)のピークが、解像のピークに対して少し前に来ることが分かっています。このため、ファインダー像においてコントラストだけでピントを判断すると、結像が甘い描写となってしまいますので、少しだけヘリコイドを戻してやる必要があります。
なお、開放〜f2.8ぐらいでは、解像のピークにフレアが発生してしまうので、ピントが少々分かりにくくなります。
前述のように、撮影に当たってはピーキングには頼らず、デジタルミラーレス機のピント拡大を駆使して、しっかりと結像が得られるようにピントを追い込むのが良いでしょう。使いこなすまでには相応のトライ&エラーを繰り返す必要があると思いますが、先人コレクター、レンズマニアから長年珍重されてきた、Plasmatの描写とじっくりお付き合い頂ければと思います。
試写館に作例を掲載しました。ご覧頂ければ幸いです。
参考までに、作例にはコントラストのピーク、解像のピークのそれぞれで撮影を行ったサンプル写真を掲載しています。
汎用性の高いM42マウントアダプター、大判など他マウントなどへの接続に使えるM65マウントアダプター、57~58mmぐらいの内ネジが切られているマウントアダプター、純正フードが付属します。