アンジェニュー 90mm f1.8。Type P1 前期型。本品は稀少な純正ライカ・スクリューマウント。製造はシネレンズメーカーとして著名なフランスのP. Angenieux社。エルノスター型の4群5枚構成。距離表記はメートル。
本品の製造番号は1786xx。1950年の製造。著名コレクターPatrice-Herve Pont氏のAngenieux本の中で、氏が記録している最初の番号の178711よりも早い製造番号です。初期ほど偉いとされるこの世界にあってはかなり偉いP1です(笑)
実にアンジェらしい、ドラマチックな作画を味わえる中望遠レンズ。カラー撮影でも期待を裏切らない発色、そしてよりドラマチックな描写が得られるモノクローム。
カラーでもモノクロでも、美しく、訴える力にあふれる描写が楽しめます。大口径望遠が故にピント合わせは非常にシビアですが、当店スタッフの評価も非常に高く、試写の度に心が躍ります。
往年かなりご活躍だったのでしょう、長年の使用により黒アルマイト塗装は薄くなり、ガンブラック色に褪色しています。使い込んだボディと合わせれば、「おおっ!」と声が出るほどの風格です。
本品には非常に珍しい純正フードが装着されていますが、こちらは全くもって外れません。修理業者さんにもあの手この手で脱着にトライして頂きましたが、ビクともしませんでした。雰囲気はバッチリ合っていますので、このままお使いください。
2024年8月にフルOH済。絞り、ヘリコイドを入念に調整し、素晴らしい操作感となりました。
鏡胴に刻まれた3箇所の絞り指標は、何故か3箇所ともわずかに異なる絞り値を示しますが、これが製造時からの指標位置です。非常に早い製造番号が故に、試作品的な位置づけだったのでしょうか。
整備をされた修理業者さんによると、内部の構造も通常のP1とは異なっていたそうです。
OHと同時にピント調整も行っています。近接〜3m付近ではごくわずかに前ピン傾向ですが、実写テスト結果は良好です。
レンズにはアンジェニューにありがちな拭き傷、わずかなコーティングの劣化、また前玉にカビ跡が一点見られますが、大口径アンジェとしてはまずまず綺麗めなガラスです。P1らしい、何とも美しい描写を味わえます。
試写館に作例を掲載しました。程よい柔らかさを伴った絞り開放描写は実に良い雰囲気です。人物やネコ、ワンちゃんを撮影すれば、レンズの良さはより引き立つでしょう。