ズノー 5cm f1.1 中期型。ライカスクリューマウント。距離計連動。製造番号5000番台。Zunow Opt.銘。1955年に帝国光学からズノー光学工業へと社名変更がなされ銘板の文字も変わりました。へリコイドの距離表記はfeet。
ズノー 50mm f1.1(初期、ピンポン)は1953年に登場。当時無名に近い帝国光学が、世界一の明るさを持ったレンズを衝撃的にデビューさせました。このズノーレンズの登場を口火に国産超大口径レンズ競争が勃発、小西六、日本光学、キヤノン、富士写真工業などの各社から、f1近傍クラスの魅力的なレンズが次々と発売されました。
くびれとローレットがリズミカルで実に格好良い鏡胴デザイン、独特のブランド名称「ズノー」、盛大なフレア三昧の絞り開放描写、短命ながらも世界一明るい標準レンズとして、戦後の日本人の心を沸かせた存在であった事でしょう。魅力とストーリーに溢れた、唯一無二の国産超大口径レンズです。
中期型は、前期型・通称ピンポンの後玉の出っ張りが無くなり、レンズ脱着の安心感が向上、また絞り開放付近でのフレアが抑えられた印象です。短期間の製造ながら、ズノーには多くのバリエーションがありますが、本品は一番多く見かけるタイプでしょう。
絞り開放から1段、2段と絞って行くと描写が急激に引き締まり、別のレンズのような写りを楽しめます。眺めて良し、撮って良しの一本。
稀少品。
軽微ながらメッキの劣化が見られますが、使用感は少なく、まずまず綺麗な外観です。
2024年7月にピント調整を含む、フルオーバーホール済。各部の操作感滑らかに仕上がっています。距離計連動もバッチリ。絞り開放からビシバシとピントが来ており、撮影のリズムも上がります。
前玉と後玉に拭き傷、各面に強いLED光にかざして分かる程度のクモリ状のコーティングに傷みが見られます。強い逆光時に多少の影響があるかも知れませんが、通常撮影への影響はほとんど感じられないでしょう。
純正の革ケース、Kenko製のUVフィルターとWalz製のねじ込み式前キャップ(いずれもズノー用？？)が付属します。特殊なネジ径のためフィルター探しに苦労するレンズだけに嬉しいセット。
試写館に作例を掲載しました。ピンポンに比べると絞り開放の結像感が向上しており、安定感のある雰囲気の良い像を結びます。ご覧頂ければ幸いです。
