英国製の銘ライカコピー機、Witness用初期の標準レンズ、ダロン 50mm f2.9。量産性とF値の暗さから、すぐにSuper-Six 2inch f1.9へと交替してしまいました。
Witnessの初期ロット約250台に対し、このダロンは僅か160本程度が生産されたようです。しかしながら、実際Witnessに装着されセット販売された本数は更に少なく、その出現頻度からDaron付のWitnessの製造台数は50台にも満たないと思われます。
真鍮地にクロームメッキの鏡胴。各エレメントには美しいブルーコーティンが施されています。また絞り羽根も青色に焼き入れ?されており、絞りを閉じた時の様は幻想的な輝きのブルー。
レンズ構成は3群4枚。最短45cmまで寄れる近接ロック付のヘリコイドは使い易く、無限遠ストッパーの解除は押し込むのでは無く、横に倒すなど独創的な機構は他に類を見ません。スペック的には地味ですが、なかなか魅力的なレンズです。
なお、このレンズはオリジナル状態ではフィルターリングがクロームメッキでキラキラ光っており、盛大なフレアに悩まされますが、この部分を艶消し塗料で塗ってやると、見事にシャープな描写となります。
このDaronレンズ、Illford社の支援のもと、Taylor-Hobson社の製造設備が供給されたNSE社により、設計と製造が行われました。
設計者はユダヤ系のRobert Sternberg。戦前のライツでカメラ設計に携わっていましたが、第二次大戦前に渡英し、エンサイン社で仕事を得ました。エルンスト・ライツIII世が、渡英後も就職に困らないようにと記した紹介文に救われた様です。
人間模様やそのヒストリーにも胸が熱くなる一本。珍品。
当店販売品です。お客様に大切に使われ、この度当店に出戻って来ました。今回で4回目の販売となります。
2020年にフルOH済。前回販売時と変わらず、各部の動作正常、距離計連動も良好です。使用感殆ど見られず、クロームメッキは美しく輝いています。
レンズはごく薄い拭き傷が見られますが、年代を考えればとても綺麗なガラスでしょう。美しい外観と共に、現存するダロン 50mm f2.9の中でもかなり上位の個体ではないでしょうか。
実写結果良好。周辺はやや流れますが、中心部の解像は非常に良く発色も良い印象です。前回販売時の作例ですが、試写館をご覧頂ければ幸いです。