ライツのコードはHEKON。戦前ライツの中望遠銘レンズ、ヘクトール 73mm f1.9。本品はブラックペイントとニッケルメッキ仕上げ。
本品は製造番号12万台。1931年に出荷された、ヘクトール 73mm製造初年度121本のうちの1本。meter表記。回転ヘリコイド式。
絞り開放付近ではフワリとした滲みを伴う写りで、実にオールドレンズらしい味わいです。絞り込んでいくと解像が立ち上がり、被写体を引き立てる描写となります。絞り値3.2〜6.3が使い頃ですが、独特の描写を味わえる絞り開放〜2.2付近も積極的に楽しみたいところです。
フィルターは本来かぶせ式ですが、39mmのねじこみフィルターも使えます。フードキャップは欠品していますが、純正フードとベークライト製後キャップが付属します。
全体的に軽微な使用感が見られ、長年の使用に伴う自然な風合いに育っています。フードも見合ったコンディション。
2024年1月にフルOH済み。絞り、ヘリコイドの操作感は潤いを取り戻し、程よいトルク感に調律されています。ピントに厳しいお客様が愛用されていた個体だけに、距離計連動もバッチリ。指標はありませんが1m付近からの近接撮影も可能で、距離計ともしっかりと連動しています。通常は1.5mからの連動ですのでコレは嬉しいアドバンテージ。
ガラスが傷んだ個体の多いレンズですが、この個体は前玉と中玉に経年によるガラスのヤケが見られる程度で、拭き傷も殆ど少なくヘクトールとしては良好な状態です。バル切れも見られません。
試写館に作例を掲載しました。いずれも撮影は絞り開放で、柔らかさや逆光に弱い感じが実にオールドレンズらしい味わい。とは言え、結像がとてもしっかりしており、芯のある写りが得られます。日常を非日常に変えてくれる楽しいレンズです。