エルマー 5cm f3.5。ライカLマウント。距離計連動。ノンコート。鏡胴番号は7番。メートル表記。
本品は製造番号入りのエルマーとしては95xxxとかなり早い番号で、製造時期は1930年頃と思われます。ちなみに距離計を内蔵したライカ DIIの登場は、その2年後の1932年。
推測とはなりますが、1930年頃にライカ C型向けに製造された距離計非連動時代のエルマーを、1933年頃にライツにて距離計連動に純正改造された個体と思われます。
ニッケルメッキ仕上げの鏡胴は、クロームメッキ仕様へと入れ替えられていますが、沈胴部はニッケルメッキ仕上げのままとなっています。ニッケルからクロームメッキへ移行する時期の、かなり初期に行われた改造でしょうか。妄想が膨らみます。
こう考えると、クロームメッキの銘板や基部の状態と比べ、ニッケルメッキの沈胴部に擦れが多いことにも納得です。
この一見ニコイチっぽいカラーリング(?)は、コンタックス I型(ブラコン)用ゾナーやテッサーにも見られるニッケル&クローム、通称ハイブリッドと同じです。コチラはハイブリッド・エルマーとでも名付けましょうか(笑)
ブラコン用ハイブリッドと比較して、このハイブリッド・エルマーの数はかなり少ないですが、製造番号の早い単体エルマーや、またDIIなどのボディにもごく稀に見られます。
目測式から連動距離計内蔵、ニッケルメッキからクロームメッキへと移行する、戦前ライカの過渡期の生き証人みたいなエルマー 5cmです。
沈胴部に擦れこそ見られますが、銘板や基部は綺麗です。銘板外周のローレットはキラリと美しく輝いています。
2024年7月にフルOH済。ほどよいトルク感を伴った操作感に仕上がっており、巷のエルマーとは一線を画す心地よさ。鏡胴内部の遮光バッフルなども内面反射防止艶消し塗料で丁寧に塗り直され、より締まった描写が期待出来ます。距離計連動もバッチリ。
前玉には拭き傷とガラスの劣化が見られます。強い逆光下など光の条件によっては若干の影響が見られるかもしれませんが、通常光での実写テスト結果は良好でした。