帝国光学製造のズノー 50ミリ f1.1初期型。通称ピンポン玉。シリアル番号は36xx。浜野道三郎氏設計、国産大口径開発競争の先駆けとなった記念碑的な一本。Teikoku Kogaku Japan銘。
1953年に発表、1954年に発売。発売当時は国内外で大きな話題となったそうです。本品は初期ピンポン玉の中でも更に初期のモデルと思われ、後のピンポン玉とは鏡胴の形状が異なります。
ズノー初期玉は手作りのようなレンズで、外観デザインやレンズ構成を含め、多くのバリエーションが見られますが、本品は絞り操作リングがヘリコイドのすぐ上にある珍品モデル。通常のズノーの操作感に慣れていると戸惑います。絞り羽根は8枚。
前玉、飛び出した後玉は共に淡いブルーに輝き、見ているだけでも引き込まれそうな美しさ。鏡胴のデザインや加工も見事です。
絞り開放では目もくらむような白いベールのフレアが全面を覆います。後のズノー改良型と比較すると、絞り開放付近はかなり甘い描写で周辺の光量も不足しますが、この初期ピンポンはそれを補って余りあるヒストリーと存在感。絞り込めば一気に解像感とコントラストは高まり、後期型と変わらないシャープな描写に。
初期玉ピンポンの後玉の出っ張りは強烈で、取扱には細心の注意が必要です。
珍品。
鏡胴には薄い擦れや小キズが多少見られますが、真鍮が出ているような箇所はありません。
2024年2月にフルOH済。丁寧な整備により、絞りやヘリコイドは大変滑らかな仕上がり。ギスギスしがちなズノーの操作感とは一線を画します。距離計連動もOKです。
レンズは前玉に拭き傷がやや多く見られます。また、中玉の端にごくごく小さなバル切れ、後玉にごく薄い拭きキズが見られますが、ピンポンズノーとしては良いガラスコンディションです。
試写館に作例を掲載しました。絞り開放付近では幻想的な撮像が得られます。前半は絞り開放と1〜2段絞った作例が続きます。ご覧頂ければ幸いです。
付属の非純正前キャップを装着すると収納出来ませんが、ズノー純正の革ケースが付属します。