珍品、ライカ B型。前期モデルの旧コンパー付、通称ダイヤルセット。
本品はシリアル6000番台の1928年製、5986〜6272の3rdロットのうちの1台。レンズの距離指標はメートル。
ライカ B型は、1941年までに新・旧コンパー合わせて1700台程度(うち旧コンパー付はわずか638台!)が生産されましたが、DII登場の1932年以降はほとんど売れなかったようです。実際に操作をしてみるとその使い難さがよく分かります。売れなかった理由も良〜く分かります笑
旧コンパーシャッターは、1秒〜1/300、B(D)、T(Z)を装備。真ん中に鎮座するクルリと可愛いレンズの周囲には、ちゃんとエルマー銘が刻印されています。
フィルムロック解除ボタンはエクボレリーズ(最初期のB型はマッシュルームレリーズ)。巻上げと巻戻しノブは背が低く、ローレットの刻みの目が細かなタイプ。底蓋のロックはカンヌキと、ライカA型初期とも近いつくりです。
旧コンパーに付くレバーやダイヤルなどパーツ1つ1つが古式ゆかしく、どことなくユーモラスで、触れていると思わず笑みがこぼれます。
底蓋には「PABLO FERRANDO MONTEVIDEO」の真鍮プレートが貼られています。
「Pablo Ferrando」は、南米ウルグアイの首都・モンテビデオにあったライカの正規代理店で、ライカマニアには良く知られているアルゼンチンとブラジルのライカ正規代理店、「Lutz Ferrando」の従兄弟だったそうです。
さほど重要では無いこのマメ知識、以前アルゼンチンのコレクターさんから聞きました。
戦前の稀少ライカは、ドイツとも関係が深かったアルゼンチンから出て来る事も多いですが、アルゼンチンの首都・ブエノスアイレスとモンテビデオは距離も近く、それぞれのライカ代理店は従兄弟同士。往時はこの2都市間で現在ではレアなライカがかなり流通した事もあったのでしょうか。地球の反対側の地図を眺めながら、何ともロマンが広がります。
全体的に使用感が見られます。各所にペイント落ちや小傷が見られますが、目立つようなアタリや深い傷はありません。相応に珍重されてきたことが伺えます。三脚座のネジには細ネジアダプターがろう付けされており、少々粗い仕事なのが惜しまれます。
2024年4月にOHを行いました。シャッター、巻き上げ、巻戻しなどの各部整備を施しています。実際の撮影はかなり複雑な操作が必要ですが、実用可能なコンディションです。なお、A型とは異なり沈胴はできませんのでご注意を。
巻き上げとシャッターは完全に独立しており、フィルム送りとシャッターチャージ、それぞれを操作する必要があります。
1コマ撮影後次のコマに進むには、エクボレリーズ風ボタンを押して巻き上げロックを解除し、巻き上げます。
フィルムカウンターは針がクルクルまわる可愛らしい動作です。
このフィルムカウンターはフィルム装填前にセットする必要があります。底蓋を開け、巻き上げロック解除ボタン(エクボレリーズ)を押しながら、人差し指でスプロケットギアを回し、カウンターを設定します。なお、空シャッターの2コマ分を戻しておく必要があるので、0から反時計方向に2コマの位置に設定します。
なお、フィルムカウンターや巻き上げなどの諸々の機構は、フィルム装填時でないとは動作しませんのでご注意ください。
ライカ コンパーB型の動画はこちら!
ライカ B型については、カメラレビュー・クラシックカメラ専科 No.67 「ライカブック 03」に詳細な記事があります。当店のコメントでも参考とさせて頂きました。