1953年に発売された、当時世界一の明るさを持ったレンズ、ズノー 50mm f1.1。戦後わずか8年。このズノーの登場を口火に、国産超大口径レンズ競争が勃発、各社より魅力的なレンズが次々と販売され、現代も私たちレンズ好きを魅了し続けています。
本品はズノー 5cm f1.1 中期型、ライカスクリューマウント。製造番号は6000番台。ズノー光学、Zunow Opt.銘。距離表記はFeet。4群9枚構成。
前期型・通称ピンポンの後玉の出っ張りが無くなり、レンズ脱着の安心感が向上、また絞り開放付近でのフレアが抑えられた印象です。
短期間の製造ながら、ズノーには多くのバリエーションがありますが、本品は多く見かけるタイプでしょう。
パープルのコーティングが美しい大きな前玉を強調するような、締まった腰のくびれと、細かく刻まれたローレットが、リズミカルで実にスタイリッシュな鏡胴デザイン。独特のブランド名称「ズノー」、独特に滲む絞り開放描写、短命ながらも世界一明るい標準レンズとして、戦後の日本人の心を沸かせた存在であった事でしょう。魅力とストーリーに溢れた、唯一無二の国産超大口径レンズ。
フィルター径は54.5mmとこれまたハンパなサイズですが、ハッセル用シリーズ 7フードが装着可能です(お客様からの情報です)。
開放から1段、2段と絞って行くと描写は急激に引き締まり、別のレンズのような写りを楽しめます。わずかに絞った近距離での描写は立体感に溢れ、実に良い写り。眺めて良し、撮って良しの一本。
フィルター枠外側に小傷、他にごく軽微な擦れなどは見られますが、全体的にはクロームメッキの輝きも美しい綺麗な外観です。
2023年9月にフルオーバーホール済。入念な整備を行って頂き、見違えるような極上の操作感。ズノーにありがちな鏡胴のガタやヘリコイドのきしみも無く、距離操作もスムースでストレスフリー。距離計連動もバッチリ、絞り開放から良いピントです。
レンズは前玉にごく軽微な拭き傷が数本、中玉の端に小さなバル切れが2箇所ほど、また僅かなコーティング傷みは見られますが、これらは実写にはまず影響無いでしょう。他、ズノーに散見されるクモリも無く、スカッと抜けたガラスです。
実写テスト結果も良好でした。ズノー 50/1.1としては、コンディション良好な一本。
純正前後キャップ、革ケース付。稀少品。