ニッコール-P.C 8.5cm f2、ライカ・スクリューマウントの初期型。シリアル番号903xx。本品は最初期801のシリーズに続く、第二ロットの捨て番903シリーズ。番号から推測するにその81番目の個体と思われます。製造は1949年頃。
連合国軍占領下の日本での製造で、Made In Occupied Japan(占領下の日本)の刻印入り（通称 MIOJ）。こちらの個体はレンズ鏡胴に加えて、フロントキャップと金属製のリヤキャップにもMIOJの刻印がされています。目立たぬ位置に小さく小さく刻印されたこの文字列から、当時製造に携わった方々の心情が伝わってくるような気がします。
レンズの設計は3群５枚構成のゾナー型。feet表記。D.D.ダンカン氏が朝鮮戦争で使用し絶賛を得た高名なレンズ。日本製レンズの優秀さを世界に広めた立役者とも呼ぶべき存在です。
純正フード、フードキャップ、後キャップ、革ケースが付属します。ベークライト前キャップはかぶせタイプ。コレクションに相応しい一本です。珍品。
ごく軽微な擦れが見られる程度で、全体的にとても綺麗な外観です。クロームメッキにも目立った傷みは見られず、美しく輝いています。
各部の動作良好、距離連動もOKです。ヘリコイドに少々の重さは感じられますが、実用上問題はありません。
前玉に長さ1cmほどのごくごく浅い線状の傷が1本だけ見られます。またレンズ中玉にごくごく薄いクモリが見られますが、実写には影響無いでしょう。本品はコレクション的な価値を優先し、敢えて整備は行っておりません(ご希望の方には別途有償整備も承ります)。
MIOJ刻印の付属品も揃っており、総じて大変素晴らしいコンディション。
大切にされてきた稀少品であることが感じられます。
