ライツのコード名はHEKON。戦前ライツの中望遠銘レンズ、ヘクトール 73mm f1.9。製造番号は43万台、1938年製。嬉しいメートル表記。バルナックからM型ライカなど、外観のマッチングがしやすいブラックペイントとクロームメッキ仕上げ。回転ヘリコイド式で、ヘクトール 73mmの中でも生産本数が一番多いタイプです。
絞り開放付近ではフワリとした滲みを伴う写りで、実にオールドレンズらしい味わい。絞り込んでいくと解像が立ち上がり、被写体を引き立てる描写となります。絞り値3.2〜6.3が使い頃ですが、オールドレンズらしい描写が味わえるf2.2〜3.2付近も積極的に楽しみたいですね。
本品は外観もガラスもコンディションの良い一本。純正フード&フードキャップ、ベークライト製の純正リアキャップ付。
各所にブラックペイント落ちは見られますが、製造からの90年近い歳月を考慮すれば、大切に使われて来たことが伺えるヘクトール。マウント面などメッキ部の状態もなかなか綺麗。レンズキャップにはごく軽微な凹みが見られますが、黒ペイントは厚くしっかり残っています。
2023年3月にピント調整を含むフルオーバーホール済。丁寧な整備により、絞りとヘリコイドはしっとり滑らかな絶妙な操作感。レンズが生まれ変わったかのような感触です。
距離計連動は最短撮影距離指標の1.5mはもちろん、さらに近接側のドン突きからピタリと連動します。これだけキチンと連動するヘクトール 7.3cm は稀有でしょう。
前玉にはルーペで見てようやく分かるほどの軽微な拭き傷が見られます。中玉の周辺部には数点の軽微なカビ痕が見られますが、クリーニング処理でも除去しきれないわずかな残留痕です。撮影への影響はまず無いでしょう。全体的にヘクトール 73mmとしては、上位のガラスコンディション。描写&連動バッチリ、じっくりと使い込んで頂きたい一本です。