珍品、製造番号にアスタリスクが付くズミター 50mm f2。初期型。製造番号は53万台。1939年製。ライツの製品コードはSOORE。円形絞り(丸絞り)で表記は大陸式。meter表記。4群7枚構成でノンコート。
ズミクロンの名声に隠れがちなズミタール 50mmですが、オールドレンズらしい味わいに満ちたレンズです。f2大口径高速レンズの先代、ズマールと比較すると、絞り開放付近での周辺落ちや流れが改善されています。
本品はシリアル番号の直後に「*」がつき、重複した番号であることを示しています。同じように製造番号の後ろにアスタリスクが付いているズミターは、十数本程度は確認されているようです。著名なJames Lager(ジム
・ラーガー)氏の書籍にも、530461*の記載があります。
シリアルが重複した背景としては、520001〜530000の番号帯で1万本(‼)ものズミターが製造されることになりましたが、予定外にSummitarの生産本数を増やすこととなったため、530001番〜530500番に製造が予定されていた、シネ用のHektor Rapidレンズとシリアル番号と重複する事態が発生してしまったものと推測されます。
ちなみに、Summitar銘の後に「*」がつくものが存在しますが、こちらはズミクロンのプロトとして珍重されているもので、本品とは全く別モノ、お値段も10倍近くとなるでしょう。
なお、この個体は2006年の英国クリスティーズ・オークションに出品されていたとの記録が残っています。
沈胴部の擦れも少なく、全体的に使用感少ないコンディション。使い込まれてガタガタになった個体が多いズミターとしては、かなり綺麗な鏡胴です。
2025年にフルOH済。入念な整備により、絞りリング、ヘリコイド共に適度なトルク感を伴った滑らかさな使い心地に仕上がっています。距離計連動もバッチリ、ピントも良好です。
キレイめな外観と相まって、レンズにも拭きキズやクモリも無く、スカッと抜けた綺麗なガラスです。ノンコートのズミターならではの写りをお楽しみ頂けるでしょう。
鏡胴内部の内面反射防止ラッカーも丁寧に塗り直されて、より締まった描写が期待出来ます。実写テストも非常に良好でした。
純正前後キャップが付属します。余談ですが、ズミター用の前キャップは後年のズミクロン用より僅かに径が小さく、合いません。